★細胞分裂の回数を定めるテロメア
老化の原因物質として大きく人体に関わっているものに「テロメア」と呼ばれる組織があります。
このテロメアとは、人体内の細胞が細胞分裂を行う際に細胞の情報を伝達する染色体の一部です。
テロメアの構造はDNA染色体の両端部分に位置しており細胞分裂が可能となる回数に関する情報を保持していることが明らかになってきております。
テロメアが持つ情報は動物によって異なり、私達ヒトの場合は平均で約50回程度。
ですから例えば50回という規定ラインの細胞分裂を繰り返すと、その後は細胞分裂ができなくなるため老化細胞へ移行していく流れを辿ることになります。
この細胞分裂の回数に上限があることを初めて発見したのはアメリカの生物学者であるヘイフリックです。
彼は産まれたばかりの赤ちゃんの細胞と成人の細胞の研究を続けテロメアの長さに変化が見られることをつきとめます。
この功績から細胞分裂の回数の限界があることを発見者の名前をとり「ヘイフリックの限界」と呼んでおります。
アンチエイジング分野ではこのテロメアの構造を研究することで新しいアンチエイジング医療の発展の可能性が期待されております。
しかし、テロメアは臓器や組織によっても分裂可能回数が異なる点や女性の卵子などの染色体の場合はテロメアの長さが同じ場合でも老化の進行度合いが異なる点などまだ未解明な部分が多く存在しております。
【推定寿命を測定する検査】
テロメアの測定検査を行うことで個人の寿命を推測する「寿命検査」が近年話題を集めるようになってきました。
と言っても、これはまだ日本では実施されておらず、海外の話で最も最初に導入したのはスペイン。
これはあくまで推定寿命の話です。
寿命検査ではどのように寿命を推測しているのでしょうか?
これはやはり誰もが気になるところでしょう。
細胞分裂ができなくなった細胞は「老化細胞」と呼ばれる細胞へと変化し、その後新しく生まれ変わることはできなくなります。
この細胞分裂の回数を定めるテロメアは分裂を繰り返す度に自分の身を削るように少しずつ短くなっていくという特徴があります。
このテロメアの短縮するメカニズムを応用して、長さと年齢を測定しテロメアが短縮するペース配分を測定しヒトの平均細胞分裂可能回数である50回を目安として推定寿命を測定する流れが測定の基本です。
しかし、このテロメア理論による推定は他の「フリーラジカル要因」やプログラム細胞などの関与が考慮されていない部分もあるためやはり目安の数値でしかありません。
尚、テロメア寿命検査の検査費用は実施する国によっても異なりますが日本円で5万円~7万円程度とのこと。
老化のペースや健康状態を把握する上での指標として捉えるならば今後のアンチエイジング医療にとっても重要な検査となってくるかもしれません。
★テロメラーゼの役割・働きについて
テロメアは細胞分裂を行うことが可能となる回数に大きく影響を与えていること。
そしてこのテロメアの短縮過程を測定することで推定寿命の目安を確認できる可能性があることはここまでに解説してきたとおりです。
細胞分裂を繰り返す度に「染色体」の両端にあるテロメアは短くなり一定の長さになると分裂不能となり老化細胞へと変化する。
この老化細胞は直ぐに寿命を迎えることはありませんが、今後細胞分裂を行うことはやはりできません。
では、この短縮していくテロメアそのものを増殖することはできないのでしょうか?
実はこの試みは既に研究が始められており、テロメアを伸ばす役割・働きを持つテロメラーゼと呼ばれるたんぱく質酵素が重要な鍵を握っていることが解ってきております。
テロメラーゼは全ての細胞の元となるES細胞に多く含まれており、精子や卵細胞内にも多く存在します。
卵子内のテロメア染色体は10代~40代の女性まで長さがほとんど変わることがありません。
これはテロメラーゼが短縮するテロメアを伸ばしているためです。
テロメア寿命検査ではテロメアの長さを測定しますが、卵子のようにテロメアが同じ長さであっても妊娠の確率はやはり10代と40代では異なる部分もある為、テロメアそのものが老化の指標と呼べるかどうかは疑問の残る部分ではあります。
採取した皮膚をテロメラーゼで培養しテロメアの長さを一定の長さまで修復してから皮膚移植を行うと、その部分は若返りが確認されたという報告などもありますが、テロメラーゼはガン細胞の活性化をもたらす可能性も高いことが研究の課題となっております。